料理を作ればサラリーマンのうつ病は治せる!

2017年に定年退職した元サラリーマンが、自分のうつ病体験を元に「うつ病から自力で回復するためのリハビリテーション方法=料理を作ること!」について、思った事・できた事をあれこれ語ります。

料理を作ればサラリーマンのうつ病は治せる! 【不定期連載 第10回:料理作りにチャレンジするには】

 子供のいない初老の夫婦が今更クリスマスでもありませんが、二人ともチキンは好きなので、昨日はチキンのトマトソース煮を作りました。もう一品は前日に作ったあさりとベーコンのクラムチャウダースープです。大根と人参のなますは、妻の友人からの戴き物です。

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料理作りにチャレンジする時期は

 うつの真只中にいるときは、本当につらく苦しいものです。きっかけになった出来事や環境・あなたの周囲の人物、キーワードとなった言葉やそれが発せられた場面、そこに行きつくまでの過程など、様々なものが入れ代わり立ち代わり記憶に現れ、あるいはすべてが同時に意識の中に充満し、あなたを苦しめます。

 あなたはそれらの記憶(=情報の処理)だけで頭と心が能力いっぱいになってしまい、いわゆるフリーズ(凍結)した状態になります。

 他のことを一切受け付けることができず、最悪の時には眠ることもできなくなり、身動き一つ取れなくなってしまいます。

 

 ある程度時間が立って少し落ち着き、キャパシティに余裕ができても、今度は止まっていた頭脳が動き出すため、その余裕はすぐに次のような思考でいっぱいになります。

 

「何故あんなことになったんだ・どうしてあんなことをしてしまったんだ」

 (自分に責任があるのか? 不可抗力もあっただろう)

「何故彼(彼女)は、ああ言ったんだ・私のどこが悪かったんだ」

 (自分だけが悪いんじゃない・・・)

「どうして私が非難されなければならないんだ」

 (意見の相違じゃないか・・・ 不当評価だ)

「でもやっぱり私が悪いんだ」

 (能力がない・運がない・意識がない・そもそも資格がない・・・)

 

この堂々巡りが収まるまでは、簡単に次の行動を起こすのは難しいと思います。ひたすら心を休めることに専念してください。

 

 私が提唱している「料理を作ることでうつ病のリハビリに役立てよう」というのは、ある程度落ち着いてきて、「そろそろ何かしようかな・・・」という気持ちが出てきてから、ご自分の心の様子を見ながらゆっくりチャレンジしてもらうための方法論です。

 そしてやる時は必ず、あなたの味方になってくれる家族や、信頼できる友人の協力を仰ぎましょう。信頼できる人とのコミュニケーションと客観的な評価が、なによりもあなたのリハビリ活動の支えになってくれるはずです。

 

  しかしこの方法は「これをやれば何日で復帰できる」というようなインスタントな福音を提供するものではありません。状況も効果も個人差があることであって、「始めて何日でどこまで回復できる」といった法則性が確立されたものではなく、あくまでも「効果があるであろう」と思われる仮説です。

 今のところ私一人の実証データしかありませんので、本当にすべてのサラリーマンに効果があるのかは何とも言えません。ただ、私の場合には役に立ったことは間違いないので、一つの体験談のサンプルとして提唱しています。でも、成功体験を数多く積み上げることで自信を取り戻す速度を上げることは、きっと可能だと思います。

 この仮説が取り上げられ、研究機関などで研究を進めてもらい、実際の臨床データを数多くとることができれば、いずれ取り組み方や段階や期間の法則性などを見つけることも可能ではないかな、と思っています。

 料理をはじめるには

 まず料理を始める第1歩として、「やってみようかな」という意欲を持つことが必要です。逆に言えば、その意欲を持てる程度までは回復していることが最低条件になります。そこに行きつくためには相当の時間が必要だし、医師によるカウンセリングや投薬治療も必要になるでしょう。

 しかし、「カウンセリングや投薬さえしていれば(=心療内科に通ってさえいれば)元の状態に戻れる」とは言えないのが、うつの厄介なところです。

 カウンセリングは、誰かに話すことで自分の頭の中を整理し感情的な興奮状態を抑制させる効果が認められる治療法です。しかし、その都度自分を攻める嫌な記憶を詳細に呼び起こし再現しなければならないため、回復基調になってきたときにいつまでも続けていると、毎回心の状態(=症状)を「その時」に戻してしまい、苦痛を長引かせる危険性があります。

 また投薬は、そもそも「特効薬」というものは存在せず、個人の症状に合わせてより効果のあるものを探しながら、効果が出るまで週や月単位で飲み続けなければなりません。往々にして効果が出るのが遅い薬が多く、更には、狙った効果が出る前に頭痛や便秘や動悸などの「生理的な副作用が先に現れることが多い」点でも、扱い方が難しい治療方法です。

 私の経験としては、投薬治療には限界があり、ある程度生理的に脳の働きをコントロールしてスムースにすることはできても、心の持ちよう(=マインド)までコントロールすることはできないのではないかと思います。そしてそこを支えていくのが、リハビリテーションの活動です。

いきなり始める前に

 第2に、あらかじめ何をどこまでやるかを決めることが大事です。プロセスとしては、料理のメニューを決め、食材を調達し、レシピや作り方を確認すること。そして、いつ・どの時間帯でやるのか。また一人でやるのか、誰かの協力を仰ぐのか、プロセス全体のどの部分を自分でやろうとするのか、協力者にどの部分を頼むのかなど、5W3Hに当てはめた詳細な計画作りが必要です。

 

 ここで言う5W3Hとは以下のように定義できます。

When  いつ:何月何日の何時か(下ごしらえの時間を含むスケジュール感)

Where どこで:自宅か知人宅か 屋内か屋外か

Who  誰が:自分と誰が作るのか・食べるのか(役割分担を含む)

What   何を:何を食べたいか(どんなメニューか)朝食か昼食か夕食か間食か

       必要な食材や調味料・道具は足りているか

Why  何故:好きなもの、簡単、旬の食材、栄養がある など

How to どのように:どんな手順で どんな工夫を入れるのか

 (食材調達、下ごしらえ、調理方法、後片付けの方法)

How many どのくらい:種類と量(何人前作るのか、食べきれる量か)

How much いくらで:費用の概算(規模感) 費用の負担は(Who)

 

 このくらいの詳細な計画は必要かもしれません。自分一人ですべてやり遂げる場合は別として、家族や友人に協力を仰ぐ場合、その方はプロジェクトメンバーですから、あまり事細かにきっちり紙に書かなくても良いかもしれませんが、役割分担や手順を明確にする意味でも、最低限のメモ程度のものは作っておいたほうが分かりやすいでしょう。

 もちろん、メンバー・家族には、計画段階から参加し参考意見を出してもらいます。意見が対立した時は、なるべくあなたの意思(コンセプト)は訊いてもらいますが、知恵や知識の部分(ノウハウ)は素直に受け入れましょう。

 

  「そんなに構えなくても良いのではないかな・・・?」と思われる方もいることでしょう。どこまで細かく計画するか、これも個人差があると思います。「大まかで良い」と感じるのなら、大枠の骨組みを考えた段階でスタートするのもありだと思います。

   一口にうつ状態と言っても、その症状や重度は個人差がありますし、生活の状況も、当然千差万別です。大まかに考えてスタートして、成り行き・アドリブ満載状態で走り始めて、どこまで耐えられるのかを観察するのも一つの目的になりえます。

 

  この活動は、あくまでも自分自身と向き合うための方法です。以前も書いたように、どんな結果になっても(どんな料理ができあがっても)、自分自身で責任を引き受け、自分で食べて・後片づけをすれば良いのです。自分と協力者の中だけで終息しておけば、世間から非難を浴びることは一切ありません。

 それが自分の範囲でできる程度の計画かどうかだけしっかり確認できれば、見切り発車してみるのもありでしょう。それもP-D-C-Aに発展できます。

  

 でも、そもそも「綿密な計画を立てる」ことは、うつになる人にとっては難しくありませんよね。凝りすぎて完璧な計画を作るから、いざ計画が破たんした時に影響が大きいのですが、まずは、「ここまで計画すれば充分」と納得できる段階まで、自由に計画して良いと思います。

 しかしやりたいことは、あくまでもP-D-C-Aを回すことです。あまり計画作りに時間をかけすぎないで「気軽に実施すること」に意義があります。短時間ですぐに結果が出ますから、それをすぐに評価し改善活動のサイクルを回してゆくことが重要です。

 それが可能なのが「自炊料理」の持つ特徴でもあります。

  

つづく